藤沢法人会の広報誌「しおかぜ」(2025年5月号)に寄稿しました。
https://fujisawahojinkai.or.jp/no368/

税金を支払わなかったら、虚偽の申告をしたら、どんなペナルティがあるのか?
少し長いですが、お読みいただけたら嬉しいです。

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「ちゃんと期限内に申告して支払ってくださいね」

「嘘をついて経費を水増ししてはいけませんよ」

これらは税金について当然言われていることではありますが、もし、

期限内に申告しない

期限内に支払わない

虚偽の申告をする

などがあった場合、どのようなペナルティがあるのでしょうか。

 本稿では、無申告、未納、遅延、虚偽申告などに対するペナルティとして課される税金- 附帯税 についてまとめています。

附帯税の種類

  • 延滞税

延滞税とは、納期限までに納付されなかった税金に対して課される税金で、遅延利息に相当するものです。納税義務者が期限内に本税を支払わない場合、その未納期間に応じて延滞税が加算されます。

延滞税は、以下の方式で計算されます。

  • 納期限の翌日から2か月間:年7.3%または延滞税特例基準割合+1%(いずれか低い方)
  • 納期限の翌日から2か月経過後:年14.6%または延滞税特例基準割合+7.3%(いずれか低い方)

※特例基準割合は毎年変動し、財務省が発表

参考までに令和7年1月1日~令和7年12月31日の割合は、①2.4%、②8.7%となります。

  • 加算税

加算税は、納税者が申告義務を怠った場合や過少申告を行った場合に、本税とは別に課される税金です。

  • 無申告加算税:期限内に申告しなかった場合に課される。
    • 自主的に申告した場合:5%
    • 税務署の指摘による場合:50万円以下は10%、50万円を超え300万円までの部分は15%、300万円を超える部分は25%
  • 過少申告加算税:申告額が実際よりも少なかった場合に課される。
    • 10%(過少額が50万円を超える部分は15%)
  • 不納付加算税:源泉徴収税を期限内に納付しなかった場合に課される。
    • 原則として10%(自主的に期限後納付した場合は5%)
  • 重加算税:意図的な虚偽申告や隠蔽行為があった場合に課される。
    • 無申告の場合:40%(無申告加算税に代えて)
    • 過少申告・不納付の場合:35%(過少申告加算税・不納付加算税に代えて)

※ともに一部例外有

  • 利子税

利子税は、延納や分割納付を選択した場合に、その期間に対して課される税金です。

 年により変動しますが、令和4年以後は0.9%となっています。

  • 過怠税

 過怠税は、印紙税を課税文書作成時までに正しく納付しなかった場合に課される税金です。

  印紙税は、課税文書を作成するときに、その文書に所定の額面の収入印紙を貼り付け、印章又は署名で消印することによって納付します。もし、税務調査の際に、収入印紙を貼るべき課税文書に印紙を貼っていないことがわかると、その納付しなかった印紙税の額に加えて、その2倍に相当する金額(つまり、本来納付すべきだった印紙税額の3倍)が過怠税として徴収されます。

附帯税の役割

 附帯税の役割としては以下が挙げられます。

  • 納税の公平性確保:正しく申告・納税している人とそうでない人の間に公平性を持たせる。
  • 徴税の促進:納期限を守る動機付けとして機能し、税収の安定化に寄与する。
  • 財政の健全性維持:本税の未納や遅延による財政悪化を軽減する。

重加算税の事例

① 売上の除外による過少申告

ある企業が売上の一部を意図的に計上せず、申告額を実際よりも少なくしていた。税務調査で隠された売上が発覚し、重加算税(35%)が課された。

② 架空経費の計上

 ある企業が実際には支出していない経費(架空仕入れや架空人件費)を計上し、法人税額を不当に減少させた。税務署の指摘により虚偽申告と認定され、重加算税(35%)が課された。

③ 二重帳簿の作成

 会社が税務署の目を欺くために、表向きの帳簿と実際の収支を記録した裏帳簿を用意していた。税務調査で発覚し虚偽記載が認定され、重加算税(35%)が課された。

④ 無申告による重加算税

個人事業主が事業所得を全く申告せず、税務調査で意図的な隠蔽と認定された。税務署に指摘された結果、本来の税額に加えて、重加算税(40%)が課された。

 附帯税の負担が大きくなるケースとしては、何年も多額の虚偽申告もしくは無申告を続けた結果、重加算税が適用されるパターンです。重加算税に加えて延滞税も別にかかってきますので、会社の経営や個人の生活にまで深刻な影響を及ぼすことになります。

 他には、明らかに個人的な支出を法人の経費としていたことが発覚すると、その経費とされていた部分が役員賞与とみなされ、法人税・消費税の追徴課税に加えて、個人の所得税・住民税も遡って課税されることになります。これも法人・個人どちらにとっても非常に厳しいペナルティです。

最後に

 税制度を維持するには公平性が不可欠ですから、こうしたペナルティとして課される税金が存在するのはある意味当然と言えます。虚偽申告や無申告を繰り返した結果、多額の附帯税を課され、会社の経営が立ち行かなくなる、個人の生活が成り立たなくなる、といった事例を今まで多く見て来ました。そして、当事者の皆様は本当に後悔されていました。正しく適切な納税を行うことで、会社、個人、それらに関わる取引先、ご家族などの関係者を守ることに繋がるのだと再度ご認識いただければ幸いです。